【感想】ＴＶシリーズ『School Days』第十二話「スクールデイズ」

『School Days』
　(監督：元永 慶太郎)

　いやはや…

　この『School Days』という名の蓼は、正真正銘本物の蓼でした。

　「蓼食う虫も好き好き」とはいえ、ここまでの蓼に成長するとは、誰も思っていなかったことでしょう。

　他にもすることがたくさんあるのですが、今は最優先事項でこの『School Days』の感想を認めたいと思い、このエントリをタイプしています。

　シリーズ構成の上江洲 誠さんのブログにも、「告知文章でのネタバレぐらいでは揺るがない物凄い最終回」と書かれていたので、それなりの覚悟をもってこの第１２話に臨んだのですが、そんなちっぽけな覚悟では、まだまだまだまだ足りませんでした。

　『らき☆すた』(監督：山本 寛(～#04),武本 康弘(#05～))や『天元突破 グレンラガン』(監督：今石 洋之)など、今期はたいへん素晴らしい作品が目白押しでした。
　ところが、これらの作品でどんなに感動をしていても、その感動をこの蓼がどんどんリプレイスしていきます…
　先に観た作品の印象を、この蓼がどんどん吹き飛ばしていくし、後から他の作品を観ても、この蓼の印象が強すぎて、その感動は薄味にしか感じられない…

　「本作品は視聴年齢制限をかけて放送しておりますので視聴に際しては十分ご注意いただけますようお願い申し上げます。」

　この警告画面を観て自分は、『エルフェンリート elfen lied』(監督：神戸 守)を思い出しました。
　そしてこの蓼は、その『エルフェンリート elfen lied』を軽々と越えていきました。
　『エルフェンリート elfen lied』は人の首を斬るといった肉体的な痛みでしたが、この蓼はこちらの心を直接ヤスリで削り取るような精神的な痛みです。
　どちらがより勝っているのかは、いうまでもないでしょう。

　また、『今、そこにいる僕』(監督：大地 丙太郎)や『Ｒｏｍｅｏ×Ｊｕｌｉｅｔ』(監督：追崎 史敏)の石井 康嗣さんのキャラクタを観ても別段、フィクションのキャラクタなので、「こういう悪役作りかぁ」ぐらいの印象でした。
　ところが・・・この伊藤 誠(ＣＶ：平川 大輔)には、フィクションであるにも関わらず、本気で殺意を抱きましたよ。
　３０数年間生きてきて、こんな経験は生まれて初めてのことです。
　「誠死ね！」というドス黒い感情が自分の中に生まれたとき、この蓼の実力を思い知らされました。
　作品とは距離をおいて臨んでいるつもりが、いつの間にか自分が作品自体に呑み込まれている。
　こんなに怖ろしいことは、他にありません。

　しかしこの最終回は、いつも以上に演出が冴え渡りすぎていて、たいへん怖かったです。

特に「ごめん」の後に、
　　だ
　　ぁ
　　｜
　　っ
　　と
　　改
　　行
　　記
　　号
　　が
　　続
　　い
　　て
　　の
「さよなら」演出が、物凄く良かったです。
　ここで流れる挿入歌「悲しみの向こうへ」(唄：いとう かなこ)が抜群に良かった。
　というか、余りにも効果的すぎてもうそれこそ、こちらの心がどうにかなってしまいそうです。

　確かに「誠死ね！」というドス黒い感情は抱いていたけれど、あの誠に馬乗りになってのめった刺しをした世界(ＣＶ：河原木 志穂)の姿を眼にすると、何ともいえない、たいへん複雑な心境になります。
　またその志穂さんの演技には感情が載りすぎていて、平常心では観ていられません。
　『Radio School Days』の志穂さんとは、まるで別人です。
　「スーパーおとうとタイム」は何処へ?

　それともう一つというか、これ以上の演出はないと感じたのは、やはり次のシーンですね。

「やっぱり…嘘だったんじゃないですか」

　　　　暗 転

「中に誰もいませんよ」

　この感想文のために、この蓼を何度も観返しているのですが（我ながら気持ち悪い奴だ）、この

「中に誰もいませんよ」

の台詞には、毎回同じように戦慄が走ります。
　妙さんの演技が冴え渡りすぎです。
　いや、演技とは思えない…ううん、演技を越えた感情が載りすぎです。
　『Radio School Days』の妙さんとは、まるでまるで別人です。

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　しかしあの黒い血飛沫が夜空に吹き上がったとき、放送では無音声だったけれど、あの言葉は間違いなく「死んじゃえっ！！」って、叫んでいたと思います。

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　だいたい、世界がいう「お腹に子供がいる」の真偽を確認するために、世界の腹を割いて子宮の中身を確認する言葉って・・・
　こうして文章をタイプしているだけでも、気分が悪くなってくるのに、このときの映像ときたら、その子宮の中から言葉を捉えているんです。
　でもこれ、洋上の言葉が誠の生首だけで満足していたことを鑑みると、子宮内の子供にも手をかけて、「世界の"本当"」を「世界の"嘘"」に塗り替えたと考えるのが妥当なのかな？
　ということはこの子宮内からの映像って、その子供というか、胎児の眼から見た映像なのか・・・
　うわぁ～、自分で文章をタイプしていて、自分で気分が滅入ってくるよ。
　その上でもう一度、「中に誰もいませんよ」の台詞を噛み締めると・・・もう何もかもが出来すぎていて、たいへん怖ろしいです。
　夢に出てきそうで怖いです。

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　そんなこんなでこの蓼こと『School Days』は、間違いなく伝説になったと思います。
　いや、神話と呼んでも差し支えないかも知れません。

　実際に起こった事件のスケープゴートとしての放送中止は、たいてい「この程度で」という内容を放送中止にしていました。
　だいたい、それを放送しようと中止しようと、その事件はもう既に起こっているのですから…
　だけど軽くブログ巡りをしてみると、この『School Days』は多くのブロガに、「事件と関係なく放送中止は当然」と思わせた。　「ＡＴ-Ｘはよくぞ放送してくれた」と思わせた。
　もちろん、自分もそのうちの一人です。
　あの内容では、いくら２８：０６(AM 4:06)～の放送といえども、不特定多数の眼に触れる可能性があるＴＶＯ(テレビ大阪)での放送は難しいと思いますし、いくら有料放送で視聴年齢制限があるとはいえ、ＡＴ-Ｘでの放送は大英断だったと思います。
　「放送中止かよ！」と思わせておいて、「放送中止は当然！」で盛り上がる作品を伝説と呼ばずして、いったい何を伝説と呼びましょうか。

　そして絶対に勘違いして欲しくないのは、この『School Days』は出来が悪いから放送中止になったのではなく、出来が良すぎるから放送中止になったということです。
　ここまで視聴者の心を揺さぶり続け、ここまで視聴者の予想の遙か高見を行く作品は、そうそうあるものではありません。

　『School Days』にとってこの放送中止は、不名誉な汚点ではなく、名誉ある勲章であらんことを！

　それでは、よしなに。（敬称略）