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2006/06/19

【感想】『蟲師』第26話「草を踏む音」 on BS-FUJI

『蟲師』(1) いよいよ、『蟲師』(監督:長濱 博史)が最終回を迎えました。

 絵、音、話。
 そのどれもが観る者を魅了する、圧倒的な雰囲気のトゥルーハイビジョン映像作品。
 それが自分にとっての『蟲師』でした。




『蟲師』(2) しんしんと雪が降り積もる山村。

 遙か遠くに降る雪の一粒一粒までもが克明に描き出されているこの映像美は、トゥルーハイビジョン映像をもってして、初めて得られるものでした。
 ですが、GORRYさんのtvaformatによりますと、BS-FUJIの『蟲師』はSD(標準放送)映像からのアップコンバート映像だそうです。
 そういわれて観てみると、オープニングの文字の周りなどにドット妨害というか、ザワザワしたものを確かに感じます。
 ですがそれは、モニタに思い切り近付いて観たときの話です。
 普段の視聴距離でそれは、全くといっていいほど気になりませんでした。
 実は過去に一度、デジタル放送での録画を失敗したことがありまして、その時は仕方なく、弟が録画していたアナログ放送で凌いだことがありました。
 そのゴーストまみれで解像度の低い『蟲師』も確かに面白かったのですが、この『蟲師』には、いつものようにこちらが頭で考える前に、こちらの心を鷲掴みにする"何か"が足りませんでした。
 自分はこの経験をもって、映像や音響のクォリティが作品の感動をより高めることを実感しています。
 うちの環境でもこれだけのものが得られるのですから、きちんとした環境であれば、その感動は天井知らずでしょう。
 映像や音響のクォリティ不要論者の方には是非とも、『蟲師』をトゥルーハイビジョン映像で体験して欲しいと思います。

 また『蟲師』は映像だけでなく、音響の使い方にも息を呑みました。
 いや、「息を呑む」という在り来たりな形容では表現し切れなかったのが、阿呍の登場した第3話「柔らかい角」です。
 たくさんの呍の中から、阿を見つけ出したギンコ。
 その阿がギンコの両耳に吸い込まれる映像美もさることながら、その後に続く音響が、こちらの想像を陵駕していました。
 誰しも、自分の両耳に異物が入るとこんな感じかなぁ?と、想像することは出来るでしょう。
 ですがそれを具現化し、他人の感覚に訴えることは、並大抵のことではないと思います。
 音が蟲に吸われていることを、音響で表現する・・・しかも映像はトゥルーハイビジョンです。
 たなかかずや音響監督以下サウンドスタッフの面々は、「この難題は流石に解けないだろう」という声をよそに、見事なまでの回答を提示しました。
 恐らくは位相反転+αだと思うのですが、この音響は、自分の両耳に異物が入ることを表現しています。
 映像に負けない・・・いや、映像をも超えるこの音響には恐らく、多くの人が度肝を抜かれたことでしょう。
 そう思って、先程から検索しているのですが・・・
 余りこのときの音響について、触れられているエントリが見当たりません。
 音には余り、眼が行かないのかな?(←耳が行かないからか)
 この『蟲師』の映像美は誰もが認めるところのようですので、次は音響美の方にも耳を傾けて欲しいと思います。



『蟲師』初回限定特装版 第二集 さて『蟲師』は、一話完結で構成されています。

 ですので自分は、この第26話「草を踏む音」(最終回)の纏め方を…つまりは、『蟲師』全体としての大団円を気にしていました。
 そして『蟲師』は、自分の期待を遙かに超える、たいへん素晴らしい大団円を迎えました。

 里から光脈筋が離れ、蟲が離れ、次第に蟲の影響から解放される里の人達。
 この作品内から蟲がいなくなるということがそのまま、『蟲師』という作品自体の終焉と重なります。
 そしてオーラスのギンコの台詞は、このことを決定付けていました。

「なぁ、元ヌシ殿よ」

 あのヌシの大ナマズはもう、どこにでもいる普通の大ナマズに戻っていました。
 これまで26話を費やして語られてきた蟲達ももう、『蟲師』という作品からは去っていました。
 別に蟲師が何かをしたから蟲が去ったのではなく、ただ光脈筋が里から離れたから蟲が人から離れただけという。
 蟲師が介入することなく蟲が去ったという事実が、蟲は人に関係なく、本当にただそこに存在していただけということを強く印象付けます。
 そしてたったこれだけのことなのに、「あぁ、蟲の話はおしまいなんだなぁ」という感慨が漂ってきます。
 この、何にもないのにジワジワと伝わってくる感動は、これでもかっていうぐらいに『蟲師』の大団円に相応しいものでした。

 だけど蟲師のギンコは今でも、『蟲師』の作品世界の中で生きていると思います。

「また いつか....」


 それでは、よしなに。(敬称略)

 P.S. TBポリシーについては、こちらを参照して下さい。

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コメント

こんばんは。だんちです。
改めまして、明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!!^^

「是非とも読んで欲しい」とのコメント付きのTB、ありがとうございました。とても嬉しかったですし、読ませていただきました!!

というか…実は、年末にあの記事を書いた直後に真っ先にここに来まして、読ませていただいてからTBを試みてみたんです。
だけど、さすがはココログといいますか…。どうにもこうにも、何度トライしてみてもまったくTBが成功せず…。諦めていたんですね。
そうしたらば、TBをいただきまして。「今度こそいけるか!?」と思って再挑戦してみたらば、今度は成功しました!良かったぁ^^

映像や音響のクオリティが作品の感動をより高める、というのは読んでいてなるほど!と思わされました。
第3話「柔らかい角」の音響、確かに思い返してみるととても印象的でした。あの静寂の感じとか。
でも、あの当時僕は原作を未読で、「どうなるんだ!?」というところにばかり気をとられていて、音響効果にまで耳が行っていませんでした。専門的なことは全然分かりませんが、改めて音響に注目して視聴してみますね。

たなかかずや氏の音響では、「スクールランブル二学期」では打って変わってすごくコミカルにしかも的確に音を付けていたことが印象に残っています。
「蟲師」と「スクラン」という、対極にある作品だからこそ、たなか監督の実力を改めて思い知る感じでした。

アニメーションにおける音響演出は、これからますます重要になっていくかもしれませんね。

なんとなく忙しない生活の中で、アニメーション作品を見る時も、「なんとなく」で見てしまうことが多いのですが。
絵、音、演技、台詞ワーク、様々な匠の仕事を堪能するためにも、画面を前にして、もう一息落ち着いて、目と耳を、もう少しだけでも凝らしてみると、更にドラマを楽しめて、より非日常の30分程の旅を楽しめるのかもしれませんね。

自分の視聴姿勢について、考えさせられました。音響についてこうやって書いて下さってありがとうございました!勉強になります!^^

そして。非常に意味のある最終回でしたね。
引用されている台詞「なぁ、元ヌシ殿よ」は、最終回の最後に相応しい、素晴らしいものでしたね。残されたのは、人と、環境と、そしてそこで営まれ続けていく生活。
そこから、そっと去っていくギンコの姿は、あまりにもさり気なくって。かっちょ良すぎですよ!!
本当に素晴らしい作品、素晴らしいヒーローでした。また、いつの日か、かのハードボイルドヒーローに会いたいものですね^^

お忙しいようですが、お身体お大事になさって下さい。是非また音響のことなど、記事を通して沢山学ばせていただきたいと思っておりますので、沢山書いてくださいね!^^
今後とも、よろしくお願いいたします!!
それでは、長くなってしまいましたがこの辺で失礼いたします。

投稿: だんち | 2007/01/07 20:08

 だんちさん、こんばんは。

 2007年になっても、返信が遅くてすいません。
 その代わり、溜まっている番組を0にしてきました。
 今期こそはバンバン切って、聴取番組数を減らそうと思います。

 さて、こちらからTBを差し上げずとも読んで頂いていたようで、ありがとうございます。
 ココログのレスポンスは改善されたものの、TBの失敗率は、未だに高いままですね。
 今週行われるリトライメンテナンスは、果たして成功するでしょうか?

 さて、音響についてですが、次のターニングポイントは、マルチチャネル化だと思っています。
 Xbox360 や PS3 の多くのソフトは、既にマルチチャネル化されています。(しかもリアルタイムジェネレーション)
 これをTV業界が追随したときには、アニメーション業界にもマルチチャネル化の波がやってくることでしょう。
 そしてそんなとき、それを活かせる映像を生み出せるのは、今から音響を意識した作品作りをしている人だと思っています。
 本文では言葉足らずになっているのですが、音響が威力を発揮しているということは、映像が音響を意識しているからでしょう。
 何しろ音響は、常に映像に対して後付けですから。

 ちなみに、2011年のアナログ停波によって、マルチチャネルの下地は整うのですが、今のまま停波すると、絶対に暴動が起きるような普及率ですからね。
 個人的にはだんちさんにも、マルチチャネルの愉しさを知って欲しいと思っています。
 『フルメタル・パニック! The Second Raid』(監督:武本 康弘)なんて、凄くいいですよ。
 そして、BD版『AIR』のLPCM5.1chが凄いらしい…
 是非とも聴いてみたいのはやまやまですが、今の状況ではなかなか購入に踏み切れません。
 例えば、RD-A1のような決定打があれば、ボーナス一括払いで購入するんだけどなぁ…

 あと最近、自分が音響でグッ!ときたのは、『しにがみのバラッド。momo the girl god of death』(監督:望月 智充)です。
 ご覧になったでしょうか?
 この作品は望月監督が音響監督も務めていまして、音で魅せる絵コンテが非常に良かったです。


 それでは、よしなに。(敬称略)

投稿: Akihiro Inda. | 2007/01/14 23:59

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