【感想】『AIR In Summer』(後編)「あめつち -universe-」
さていよいよ、泣いても笑っても最期のTVシリーズ『AIR』(監督:石原 立也)。
心配された台風14号(ナービー)による受信障害もなく、快適に愉しむことが出来ました。
出来たのですが・・・
「あめつち -universe-」のサブタイトルは、少しだけ大きすぎたかな?という印象が拭えません。
@nifty辞書で「あめつち」をひいてみると、
(1)大空と大地。宇宙。てんち。とあります。
「―のともに久しく言ひ継げと/万葉 814」(2)天の神と地の神。
「―の堅めし国そ大和島根は/万葉 4487」
これらのファクタが全くないことはなかったのですが、視聴後感にこれらは余り残っていませんでした。
それよりも残っているのが、神奈(CV:西村 ちなみ)のコロコロ変わる表情ですね。
愛のある暴言を吐きながら、ぷんすか頬を膨らましているかと思えば、照れた表情で頬を赤らめている。
時好に投ずる言葉でいうと、「ツンデレ」でしょうか?
本当に観ているだけで愉しかったです。
さて話をアバンタイトルに戻しまして、まずは前編の続きから。
前編の凶悪な引きが、そのままこの後編のアバンタイトルになっていました。
あれだけ凶悪な引きなのだから、ここは当然、王道中の王道で来るのが定石だと思っていたら、本当に神奈はただ、柳也(CV:神奈 延年)にお手玉を見せに来ただけだった。(爆笑)
もちろんこのお約束には笑ったけど、これであの引きは詐欺だよぉ。(笑)
幼気な視聴者は例外なく騙されるって。(苦笑)
だけど後半には神奈の半裸シーンが割と長い時間用意されていて、なんだ、やれば出来るじゃないかという感じでした。
あと印象に残っているのは、柳也が過去を振り返るシーンです。
神奈と柳也の向こうに描かれた満天の星空が、本当に綺麗でした。
「これはトゥルーハイビジョン放送ではない」と頭では分かっているのですが、自分を魅了するこの背景には、最期の最期まで心を奪われってぱなしでした。
どんなに腕の立つ作家が言葉を重ねても、あの背景の美しさを言葉で伝えることは叶わないのでは?と思っています。
この『AIR In Summer』は、神奈と柳也と裏葉(CV:井上 喜久子)の三人が主役なのですが、四人目の主役は間違いなくあの背景でしょう。
台詞を話すわけでもないのに、こんなにも情熱を雄弁に語りかけてくる背景は、他の三人にも負けていないと思います。
あとは今回、キャラクタ同士の心の繋がりを意識することが多かったです。
それまで、山賊に対してのものだとばかり思っていた雲水の念仏を、神奈は一度柳也から話を聞いただけで、それは柳也のための念仏だと看取する。
これは神奈の一言で、長いこと報われなかった柳也が救われた瞬間でした。
柳也はずーっと神奈のことを守っていたのだけど、神奈だってきちんと柳也を支えている。
こういった心の繋がりがあるからこそ、『AIR』は男女愛のそれではなく、家族愛の物語なんだと思っています。
所謂「萌え」云々というのは、『AIR』のコアを構成していないんじゃないのかな?
そしてもう一つの心の繋がりは、神奈と観鈴の繋がりでしょうか?
神奈が今見た夢を語るシーンでは、1カットだけ、真夏の風に揺れるいくつもの大きな向日葵が映し出されていました。
『AIR』に於ける向日葵といえば、それはもう、観鈴のメタファ以外には考えられません。
観鈴は繰り返し夢を見ることで、1000年の時を超えて神奈を解き放ちましたが、実は神奈も観鈴の夢を見ていたのですね。
お互いに夢を見ることによって繋がっていく二人。
じーんとする、いいお話ですね。
さて、ラストシーンの、神奈の最後の台詞は、
これはTVシリーズ『AIR』第九話「つき -moon-」で、神奈が柳也と裏葉に与えた最期の命そのものです。
このあと、空に1000年幽閉される神奈の幸せは、周りの人の幸せなのかも知れません。
自分は母ウサギの許へと帰った子ウサギを見ながら、そんなことを考えていました。
さて、自分の2005年は、TVシリーズ『AIR』で始まりました。
観る者を魅了するその圧倒的なクォリティ。
映像も音声も物語もその何もかもが、まさに圧倒的。
自分がどのくらい圧倒されたかというと、このブログを本格的に稼働させ、毎週TVシリーズ『AIR』の感想を認めるようになったぐらいです。
当時、『AIR』を観ていた多くの人は、原作ソフトをプレイされていた方ばかりでしたので、その尺ギリギリまで詰め込まれた内容と、"信者"と呼ばれる人達をも唸らせる、桁違いの原作再現力ばかりが話題になっていました。
ですが当時の自分は、原作ソフト未プレイでした。
そのお陰なのか、物語の流れも早過ぎるとは感じませんでしたし、原作再現についても全く気にならなかったので、純粋にTVシリーズ『AIR』を一つの作品を観ていました。
それでも、掛け値なしに面白い!
往々にして、自分が面白い!と感じた作品は、多くの人には受け容れられず、逆に自分が詰まらない!と感じた作品ほど、より多くの人に受け容れられていました。
ところがTVシリーズ『AIR』は、本当に多くの人に受け容れられている。
ブログを通じてたくさんの人とコミュニケーションを取り、それによってTVシリーズ『AIR』に対する造詣が深まっていく。
この感覚がとっても嬉しかった。
今も当ブログでは、TVシリーズ『AIR』と同じ、京都アニメーション制作の『フルメタル・パニック! The Second Raid』(監督:武本 康弘)の感想を認めていますが、コミュニケーションを取っている人数や造詣に、そこまでのものはありません。
やはりTVシリーズ『AIR』は、一生に数回しか巡り逢えない、珠玉の名作なのでしょう。
何十年後になるかは分かりませんが、またTVシリーズ『AIR』のような作品に出逢えることを、愉しみにしています。
最後になりましたが、石原立也監督以下総てのスタッフの皆さんへ。
珠玉の名作をありがとうございました。
それでは、よしなに。(敬称略)
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コメント
ようやく、真打の感想が読めて嬉しいです。
私は原作プレイヤーですし、二次創作もしていますから、他の方々より分かる部分も多かった(逆に『知っている』とおざなりに見る部分もあった)のですけれど、まっさらな状態でこの作品を見ていたら、どんな感想を持ったのか、ふと思ったりもします。
感想を書くたびに増えていくトラックバックに、ああ、ブログを使っているんだなぁって気分になったものでした。
なかなかアニメ感想なんて書かない私ですからこんなにトラックバックやり取りするのは、次はいつになることやら……。
本当にいい作品でしたね。
投稿: あるごる | 2005/09/12 01:07
あるごるさん、こんばんは。返信が遅くなってすいません。
真打といっても、ただアップが遅いだけなのですが、お褒め頂いてありがとうございます。
当時は1日1000アクセスの日もたくさんあったのですが、今は1日100アクセス程度。
『AIR』の人気の高さには、驚かされっぱなしです。
また、『AIR』のような作品に出逢えることを愉しみにしています。
それでは、よしなに。
投稿: Akihiro Inda. | 2005/09/19 21:45
忘れた頃にこっそりアップしたような記事にTBいただき恐縮です。
またいつかAIRのような作品に出合い意見を交換できるような作品に出会える事を楽しみにしてます。
投稿: KISS.LA | 2005/10/09 14:16
こんばんは。いつも返信が遅くてすいません。
KISS.LA さんのところは巡回させて頂いていますので、これからも宜しくお願いします。
さぁ次に、『AIR』と肩を並べる作品は何かな?
それでは、よしなに。
投稿: Akihiro Inda. | 2005/10/16 19:47