【感想】『フタコイ オルタナティブ』最終話「3人でいたい」
「愛についての物語」
さてさて、『フタコイ オルタナティブ』(総監督:逢瀬 祭)は1クール(13話)を通して、本当に愛についての物語でいられたのでしょうか?
最後の最後に、本作の主人公である双葉 恋太郎(CV:関 智一)がそういっているのだから、『フタコイ オルタナティブ』は、愛についての物語で間違いないと思います。
ですが、『フタコイ オルタナティブ』には、ケレン味が多すぎると感じています。
愛についての物語の構成要素と、それ以外の構成要素ではどちらが多い?という問い掛けが愚問になるほど、愛についての物語は、ほんの少しだけしか感じられませんでした。
それはもう、愛についての物語の方が、ケレン味じゃないのかというぐらいに。
だけど、『フタコイ オルタナティブ』は面白かった。
自分のこの感情に嘘はありません。
ただですね、観終えた後に、「どうして正攻法でいかなかったのだろう?」という疑問は残りました。
やはりそれは、ケレン味がなくとも充分にやっていけるだけの、映像のパワーを感じていたからです。
今回のように、1クール分のテンションをケレン味で支えなくとも、これだったら愛についての物語だけで、充分に1クール分を描き切れたのではないかと思うわけです。
奇しくも自分は同時期に、『英國戀物語エマ』(監督:小林 常夫)を観ていました。
こちらにもインド象などのケレン味があったものの、トータルで観れば、"愚直"という言葉が似付かわしいぐらいに真面目な作品作りでしたし、何よりもそれで、愛についての物語として成功していたと思います。
うーん、こうして頭で『フタコイ オルタナティブ』を理解しようとしているのはもう、素直にいって、『フタコイ オルタナティブ』は面白くなかったということなのかなぁ?
けど、ケレン味は確かに多かったけど、それは決してマイナスファクタではなかった・・・と思う。
いや、もっというと、ケレン味という名の不条理を、自分自身が理解しきれなかったということなのかな?
もっとも、理解できないから不条理であって、理解できたらそれは不条理ではないのだろうけど…
よし、もう一つ踏み込んで考えてみよう。
「萌えアニメ」
『フタコイ オルタナティブ』は、萌えアニメとして制作されました。
これは間違いないと思います。
では、『フタコイ オルタナティブ』は、萌えアニメたり得たのか?というと、これも難しいところだと思います。
先程のケレン味の話にも絡んでくるのですが、萌えファクタはもちろんのこと、それ以外のファクタがとにかく多いのです。
愛についての物語、萌えアニメ、探偵モノ、親子モノ、etc...
この辺りが綯い交ぜになっていて、それこそが『フタコイ オルタナティブ』であるということは分かります。
ですがこれらが相殺し合っているとはいわないまでも、シナジー効果が感じられないんですよね。
そして、作品全体のクォリティが低ければ、「『フタコイ オルタナティブ』はつまらない」ともいえるのですが、個々のクォリティはかなり高いと思います。
特に自分は、TVシリーズでこんなにも板野サーカスが観られるとは、思いませんでしたから。
ですが、だからこそ自分は余計に、「正攻法で…」と思わずにはいられません。
あと、タイプしておきたいことは、オープニング&エンディングアニメーションでしょうか。
『双子の天使達が舞い降りてきて世の悪事をぶっ倒しちゃうぞ!』編と題しておきながら、アヴァンタイトルと統合された第12話を除いて、別ヴァージョンのオープニングが流れなかったのには、大いに肩を透かされました。
逆に、エンディングのクレイアニメーションは、本編に合わせて適宜入れ替えられ、最終回にはそれ専用のモノが用意されるなど、実に観応えがありました。
第1話の感想で自分は、「『AIR』に対する、2005年の最高傑作との呼び声に待ったを掛ける作品」と評していたのですが、こうして最終回まで観終えた今の感想を正直にいうと、そこまでのものはなかったかな?と…
ufotable の次回作に期待します。
それでは、よしなに。(敬称略)
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コメント
こんばんは、きつねのるーとです。
さて、以前からこの「フタコイ オルタナティブ」と村上春樹の「風の歌を聞け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」4部作との関連性を指摘していたのですが、いかがでしたでしょうか?
この二つの共通点は「双子」と、「現実世界と内面世界(夢)とのザッピング」だと思います。
後は、製作スタッフが1クールのテレビアニメでドタバタ物の90分映画に詰め込みたいアイディアを全部詰め込んでみた、実験とも取れますね。90分の映画だと切り捨てなければいけないところを30分×13回の尺なら全部詰め込んでも大丈夫みたいな、確信犯的やり逃げ説を唱えたいと思います。
少なくとも、まじめな恋愛劇は、昨年の「双恋」で見せていましたから、このスタッフとしては、意地でも同じ手法を使うわけには行かなかったのかもしれませんね。
ドタバタオンリーの話でも、まじめに作ればこんなにクオリティーの高い作品を創れるんだぞ!の、心意気を買うべきだと思うのですが、いかがでしょう。
投稿: きつねのるーと | 2005/07/02 01:24
きつねのるーとさん、こんばんは。
村上春樹さんの作品は読んだことがないので、自分にはその関連性が判らないです。
アイディアが全部詰まっていたかどうかはともかく、『双恋』とは違うアプローチを目指したのは、間違いないでしょう。
今度はこのクォリティを活かして、真面目でしっとりとした作品をと思っています。
内容について賛否両論はあっても、ufotable の制作力が高いことに、間違いはないと思いますので。
それでは、よしなに。
投稿: Akihiro Inda. | 2005/07/02 02:06
お暑ぅございます。きつねのるーとです。
この作品の小説が出ました。もうすでに読んでいるかも知れませんが、お知らせしたくTBを張りました。
投稿: きつねのるーと | 2005/08/07 20:44
ホント、暑いっすね。(^^;
さて、小説のこと、全然知らなかったです。
ということで自分のエントリのドロップキャップにも、その小説の表紙絵を載せてみました。
こういった情報は大歓迎です。
これからも宜しくお願いします。
それでは、よしなに。
投稿: Akihiro Inda. | 2005/08/07 21:05