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2005/05/04

PlayStation2『AIR』ファーストインプレッション

PS2AIR まず、最初に。
 自分のAVG(アドヴェンチャゲーム)に於けるリファレンスソフトは、いわずと知れた窮極のファミコンソフト『METAL SLADER GLORY』(1991 HAL LABORATORY INC.)です。
 このソフトを発売日に購入してからというもの、しばらくはこのソフトを凌駕するAVGに、お目に掛かることはありませんでした。
 その後、ようやく凌駕するAVGが現れたなと思えたのは、『白詰草話』(2002 Littlewitch Inc.)でした。
 その間、実に11年…
 このソフトに実装されたFFD(Floating Frame Director system)によってAVGはようやく、バック(背景)にキャラクタ(人物)とメッセージウィンドゥ(吹き出し)を重ねてという従来のフォーマットからの脱却を、図れることとなりました。

 なお、下のセパレータライン以降は、多くのAVGに対する毒舌が続きますので、心の広い方のみ読み進めて下さい。
 また事実誤認などがございましたら、遠慮なくご指摘下さい。


 さて、先程一時間ほど、PlayStation2『AIR』(2002 VisualArt's/Key/NECインターチャネル)をプレイしました。
 ですが、「やっぱりな」というのが、自分のファーストインプレッションでした。
 ウェブページや雑誌などで見た画面からの印象通り、従来AVGの呪縛に囚われていて、それが自分の快適なプレイの妨げになっていました。

 まずは冒頭から、バス停のバックのみを表示して、後はテキストだけでシナリオを済ませてきました。
 自分はTVシリーズを観ていたので、往人(CV:緑川 光)がどうやって人形を動かし、それをどんなガキんちょがどのように蹴っ飛ばしたのかを、イメージできました。
 ですが原作ソフトは、これら総てをテキストだけで進めています。
 しかも、人形の詳細に関する記述は、殆どありませんでした。
 そのため初見では、あの小さな人形を想像するのは、難しいように感じました。
 その後、中に綿を詰めて縫ってある人形のテキスト描写がなされ、木に引っ掛かっているその人形を観鈴(CV:川上 とも子)が見付けるのですが、その時もグラフィクスは表示されませんでした。
 結果あれではプレイヤが、往人の商売道具はいったいどんな人形だったのかを、把握しにくいと思います。
 後のシナリオで、キーアイテムとなる人形が冒頭からこの扱いでは、これから先が思い遣られます。

 次に、バックとキャラクタの被写界深度が大きく掛け離れているため、どうしても不自然な一枚絵に見えるシーンが幾つもありました。
 これは神尾家の居間が、顕著だと思います。
 また、パースの問題に加えて、キャラクタ同士が横に並び、お互いの眼を見ることなく話しているため、3人以上での会話時には、お互いが会話をしているようには見えませんでした。

 しかしながらこれらは、『AIR』だけが抱えている問題ではありません。
 人口に膾炙するAVGの多くが、この問題を抱えています。
 いや、この問題というか、こういったところを無視して、バックにキャラクタとメッセージウィンドゥを重ねてテキストを流すというのが、今のAVGというフォーマットの主流なんだと思います。
 長い年月を経て、AVGがこのフォーマットに落ち着いたのは恐らくですが、このフォーマットが商品として、一番効率が良いからだと思います。
 そのキャラクタに喜怒哀楽+αのパターングラフィクスを用意すれば、それだけでもう、そのキャラクタは総てのシーンをこなせます。
 そして後は、ここぞ!というところに豪華なイヴェントグラフィクスを用意すれば、今のAVGというフォーマットの最低限は満たしていると思います。
 そして、上記で指摘した箇所を不自然だからといって、各シーンごとに合わせたグラフィクスを描き起こしたとしても、商品としての対費用効果はそれほど上がらないのでしょう。
 それよりも、プレイヤの心を打つシナリオや、魅力的なキャラクタ設定に、手間と暇と人件費を掛けた方が、商品としての対費用効果が高いのだと思います。

 ですがAVGは、商品とは違う側面を持ち合わせています。
 それは作品としての側面です。
 作品として、このAVGというフォーマットは、本当にこのままで良いのでしょうか?
 このままでは良くない!
 それでは表現し切れない作品を作りたい!
 そういった衝動があったからこそ、前述の『白詰草話』や『LOVERS ~恋に落ちたら…~』(2003 Jellyfish)が登場してきたのではないのでしょうか?

 ちなみに『METAL SLADER GLORY』には、上記の多くのAVGが抱える問題点は皆無です。

 ということで『AIR』は、『Kanon』(1999 Key/VisualArt's)と同様に、システム面ではその一切を見ないことにします。
 ですがそれでも、キャラクタのグラフィクスを差し替えるだけで、いちいちメッセージ送りがストップするという、非常にストレスが溜まる仕様は、いかがなものかと思います。



 さて、ようやく『AIR』の中身について触れられるのですが、こうして原作ソフトをプレイしてみて、改めてTVシリーズのグレードの高さを感じることが出来ました。
 前述の人形はもちろんのこと、転ける観鈴から、どろり濃厚から、扇風機の描写に至るまで、とにかくその何もかもが、原作ソフトではテキストだけで済まされていました。
 ですがTVシリーズでは、これら総てがことごとく、ハイクォリティアニメーションで映像化されています。
 これでは、多くの人が心奪われることにも頷けます。
 特にTVシリーズに於ける観鈴の転け方なんて、あんなに可愛い転け方を、あのテキストから想像していた人は、それほど多くないと思います。
 また、観鈴の初登場シーンは・・・
 勇気を持ってタイプすると、原作ソフトではデッサンよりも一枚絵の完成度を優先させていました。
 ですがTVシリーズでは、一枚絵の完成度が高いのはもちろんのこと、デッサンも良く取れていました。
(でないとアニメーションさせにくいから、当然といえば当然)
 いやそれどころか、これでもかといわんばかりに全身で風を受け止め、金色の髪を靡かせる観鈴をカメラが回り込んで捉えている。
 なるほど、TVシリーズの向こうに、『AIR』に対する作り手の愛情が垣間見えるとは、このことなんですね。

 というか、改めて石原立也監督以下、TVシリーズ『AIR』に携わった総てのスタッフの意気込みを感じました。
 物凄い作品を観ている。
 もちろんこの自覚は、リアルタイムで視聴しているときからありましたが、こうして原作ソフトをプレイしてみて、その感覚はよりいっそう強いものとなりました。

 これからも時間を見付けては、少しずつでも原作ソフトをプレイしていこうと思います。
 最後にはどうか、幸せな記憶を…


 それでは、よしなに。(敬称略)

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コメント

ども、きつねのるーとです。

近年のノベライズゲーム(?)と言うか、AVGの問題点がはっきりと認識できましたです。漠然と、ただ不満に思っていたのですがどこら辺が問題なのか認識できていなかったのが恥ずかしいです。

確かに、背景を描いて立ち絵を何パターンか描いてそれを順繰りに使って音楽を当ててそれで完成!みたいなところは、ありますものね。しかも、最近はこのパターンで同人製作のゲームも出てきていて企業製作の物と同人製作の物との格差があまりなくなってきているのは、確かにどうかと思われます。
はっきりとした差に現れるのは、シナリオと、画力だけ・・・
ですからね。

ではでは

投稿: きつねのるーと | 2005/05/05 20:19

 きつねのるーとさん、こんばんは。

 ファーストコメントがきつねのるーとさんのように、理解のある人で良かったです。
 同人ソフトとの大きいな違いは、有名人を起用できるか否かではないでしょうか?
 要は資本力の違いといったところでしょうか。
 ですが、コンシューマは分かりませんが、PCの18禁ソフトはまだ、このフォーマットが主流であり続けると思っています。
 毎月、物凄い本数が出ている。
 つまりは市場が形成されていますから、そうそうなくなることはないでしょう。


 それでは、よしなに。

投稿: Akihiro Inda. | 2005/05/05 23:56

どうも、Akihiro Inda.さんに激しく原作Airをプッシュした結城レイです。
今回の感想で、かなり手痛いカウンターパンチを食らった気分になっていますけどキニシナイ。
原作ゲームをプレイして、TV版Airの評価を改めて自覚したことにだって、大きな意味があると私は思っています。
それに、確かにゲームシステムと言う点について、現状のAVGは時代遅れも甚だしいのは確実ですしね。
それと、絵に対してもあまり気にかけないでやって下さい。私は好きなのですが、どうも一般の方の感性では、あの絵はあまり上手ではないみたいなので・・・でも、やってれば慣れるらしいので、出来たら続けてやって下さい。

投稿: 結城 レイ | 2005/05/06 00:37

現状のAVGは、プレイヤーが選択してストーリーが変化するというゲームの最低限の体裁を保っているに過ぎないわけで、付加価値を何に見出すかで差を付けるのみです。画面構成はポートピア連続殺人事件からほとんど変わっていませんし、選択によるシナリオ分岐はゲーム性でポートピアに劣るものです。このあたりは、脱却できるだけのプログラマーが育っていないというのが現状のようですね。「街」も素晴らしい作品でしたが、おいそれと追随できる手法ではありませんでしたね。そういった作品ばかりなのは忌むべき問題ですが、4コマ漫画のように浸透しており、Akihiroさんの予想に同意で、手法として絶えることは無いでしょう。

AIRに関しては、キネマティックノベルという言葉で、さっさと逃げを打っています。その部分で戦う気は鼻からないといった感じですね。windows版は、バックログのボタンが極めてクリックしにくいというものでした。絵はギャルゲーよろしく、ほぼキャラのみで、キャラ以外は、テキストウィンドウという形を取ったサウンドノベルだと思って差し支えないと思います。(人形の絵はありません。PS2版は不明)
単語(人形、呪い、法術、etc.)や音楽の持つイメージの広がり重点が置かれているのがAIRの特徴なので、そのうち気にならなくなると良いのですが。

最後にはどうか、幸せな記憶を…

投稿: やじ | 2005/05/06 02:12

 結城さん、こんにちは。

 絵の基本はデッサンでして、それは直接"巧拙"に繋がります。
 それに対して"好嫌"というのは、全く違うベクトルを持っています。
 下手でも人気のある人もいれば、上手いのに見向きもされない人もいます。

 それで自分のような者は、どうしても先に眼が、キャラクタの骨格や、一枚の写真としての被写界深度に向いてしまいます。
 つまり最初は、技術の部分を見てしまいます。
 そしてその次に、そこに表現されている物を感じると…

 ですので、「気に掛けるな」という方が無理です。(^^;
 技術はあって当然、その上で何を表現するかが重要だと思っているので。

 『AIR』のイラストは、表現を優先しているんですね。


 やじさん、こんにちは。

 SEの端くれからすると、出来るやつはゴロゴロしている。
 だけど、それを活かす企画が通らないんだ!と、思ってしまいます。(^^)
 実際に、"新機軸"を謳うソフトは少ないですからね。
 PS2以降、所謂技術屋は、ミドルウェア開発に注力しているのが現状ではないでしょうか?
 自分は、"脱却できるソフトが売れない"&"脱却しないソフトが売れる"のが、諸悪の根源だと思っています。

 ところで、Windows版『AIR』には、人形のCGはないんですか!
 じゃぁあの人形の小ささは、TVシリーズオリジナルなのでしょうか?
 自分の"人形"という単語に対するイメージは、所謂"ドール"なんですね。
 ですからあのテキストでは、あの小ささをイメージできないだろうと思いました。
 皆さんは2000年の発売された当時、どんな人形をイメージされていたのでしょうか?
 非常に気になります。


 それでは、よしなに。

投稿: Akihiro Inda. | 2005/05/06 15:10

>"脱却できるソフトが売れない"&"脱却しないソフトが売れる"のが、諸悪の根源
そうですね。商業主義に乗らない「ひぐらしのなく頃に」の人気が刺激になれば良いのですが。とはいえ、これまた輸入しづらい手法ですけどね。

>じゃぁあの人形の小ささは、TVシリーズオリジナルなのでしょうか?
いえ、ポケットに入るという描写が出てくるので、おおよその大きさはイメージ出来ました。私の場合、見た目は劇場版のPVであんな風なのね~、と思ったクチです。それまでは、小さな木の人形ぽいものをイメージしていました。小山田いくの「マリオネット師」と、主人公の設定が似ていましたので。

投稿: やじ | 2005/05/06 22:25

 やじさん、こんばんは。

 「ひぐらし」は名前しか知らないのですが、それほどの手法で出来ているのでしょうか?
 ページを検索してみたのですが、あのグラフィクスで?という感じでして・・・ごめんなさい、これは偏見ですね。(^^)

 それで、後の描写で、観鈴とポケットの人形の目が合うというのがありました。
 ですのでここになって、ポケットに入るぐらいの"小さい"ものなんだなぁと思えましたが…
 「キーアイテムなんだからもっと描写しようよ」と思うのは、自分がTVシリーズを観ていたからそう思うだけなのかな?


 それでは、よしなに。

投稿: Akihiro Inda. | 2005/05/07 21:43

>ひぐらし
ゲームそのものは、選択支の全く無い、絵も音も悪いサウンドノベルです。演出もサウンドノベルの域を越えません。(各節ごとに入るTipsのアイデアは良いですが)内容は推理ホラーで、ギャグと恐怖が混在した奇妙な作品です。

どのシナリオも全く同じ一連の事件を扱いますが、異なった結末になります。ifのパラレル世界を見せ、何がキーだったのか、事件の顛末や解決方法を推理させる仕組みです。この「選択支が無い」というのがゲーム性を広げており、従来のAVGのように、安直な選択支で思考停止になること防止し、探偵にでもなったような感覚をプレイヤーに与えます。ある意味強力なロールプレイングゲームとも言えますね。

当然、複数のシナリオを期間を置いてリリースする(一度にやれないことに意味がある)必要があるため、シナリオに自信が無い限り、商業ベースではリスクが大きいでしょう。中身は従来のフラグ系シナリオなので、どれだけインパクトのある設定に出来るかが分かれ目です。そういった意味で、適当に作っても見栄えがするような万能性は持ち得ないと思われます。

>「キーアイテムなんだからもっと描写しようよ」
観鈴シナリオでのみ有効な設定なので、あまり目立っては困るという理由があります。人形のクライマックスは、バス停での夢あたりからなので、それまでに、いつも一緒&役立たずっぽさを印象付けられればOKではないでしょうか。

投稿: やじ | 2005/05/08 00:27

 やじさん、こんばんは。

 やじさんのコメントを読んで、もう一度公式ページの方を、熟読玩味してみました。

「鬼隠し編」平成14年夏コミ発表
「綿流し編」平成14年冬コミ発表
「祟殺し編」平成15年夏コミ発表
「暇潰し編」平成16年夏コミ発表
「目明し編」平成16年冬コミ発表
「罪滅し編」鋭意製作中

 まず、長期スパンで展開されていることに、驚きました。
 それとこのソフトは、魅ぃ掲示板も含めてのエンタテインメントのようで、そこにも驚きました。
 Googleで約94,200-件という人気具合を考えると、非常に魅力的なシナリオなんだろうという感じです。
 "選択肢のないことが逆にゲーム性を広げる"という文言は、自分にとっては驚きです。
 自分の知らないところで、時代は確実に歩みを進めているんですね。


 人形について、プレイタイム2時間程度の判断では、早計とのこと。
 これについてはクリア後に、改めて考えてみたいと思います。


 それでは、よしなに。

投稿: Akihiro Inda. | 2005/05/08 21:12

ひぐらしの体験版として鬼隠し編が公開されています。

ひぐらし特有の冗長な序盤を飛ばせば、プレイ時間は結構短くなるでしょうか。(6~8時間?)ストーリーを既に知っているAIRと比べて、新鮮味を感じたくなったら、もしくはホラーが読みたくなったらどうぞ。旬な作品なので、触れておいて損はありません。完結までまだまだかかるので急ぐ必要もありませんが。

投稿: やじ | 2005/05/10 00:10

 『キノの旅 -the Beautiful World-』を置いて、『AIR』をプレイしているのですが、その次には『ひぐらしのなく頃に』ですか・・・
 取り敢えず、体験版だけDLして、順番にプレイしていこうと思います。

投稿: Akihiro Inda. | 2005/05/10 20:57

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