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2005/02/04

【感想】『AIR』第五話「つばさ -wing-」

 役者による声だけの演技と、アニメータによる絵だけの演技。
 この二つがぶつかり合う先にあるのものとは?・・・

 そんな言葉がふと、脳裏を過ぎるこの作品は、グサグサと自分の心に楔を打ち付けてきます。

 ぷろだくしょんバオバブ所属の、とも蔵こと川上とも子さん。
 とも蔵さんが演じる観鈴が、夕べ見た夢を語るシーン。
 このときカメラは、ただただ真夏の青空いっぱいに広がる、白い雲を捉えているだけでした。
 あの観鈴の長台詞を、本当にただこれだけで魅せてくる。
 背景美術の技量をストレートに問うこの絵コンテには、挑戦的という形容詞が相応しいはずなのですが、そんなことは微塵も感じさせないぐらい、何気ないシーンに仕上がっています。
 ただ観鈴が往人(CV:小野大輔)に滔々と、夕べ見た夢の話をしているだけ。
 たったそれだけのシーンなのに、いつの間にか作品世界に引き込まれている自分がここにいる。
 とも蔵さんの演技を意識しているはずが、いつの間にか観鈴の話に耳を傾けている。

 これは観鈴が神経衰弱をしようとして、発作で泣き崩れるシーンもそうでした。
 「 … だ い じ ょ う ぶ … だ い じ ょ う ぶ 」
 観鈴をカメラの正面に捉え、身体を大きく仰け反らせてから、俯せになって畳の上に泣き崩れる。
 燎原の火がごとく、感情を剥き出しにして泣き出す観鈴。
 アニメータの技量をストレートに要求しているはずの絵コンテですが、それをいとも容易く描き切り、その上でキャラクタに迫真の演技を付けている。
 とも蔵さんの泣きの演技にも負けない・・・いや、それをも凌駕せんとするキャラクタの演技はまさに、アニメーションの真骨頂。
 役者による声だけの演技と、アニメータによる絵だけの演技がぶつかり合った結果、そこには紛れもなく、神尾観鈴という'少女'が泣いていました…

 ここでもう一人、81プロデュース所属の柚木涼香さん。
 柚木さんが演じる美凪は、たいへん抑揚が抑えられています。
 同じく柚木さんが演じる、『舞-HiME』(監督:小原正和)の珠洲城遥と比較すると、その差は歴然です。
 ですが、そんな抑え込んだ抑揚の中で光る、柚木さんの泣きの演技。
 「 飛 べ な い つ ば さ に 、 意 味 は あ る ん で し ょ う か ? … 」
 先程の観鈴のそれとは対照的に、包み隠し、抑えることによる感情表現。
 しかもこのとき辺りは、夕暮れ時の高校の屋上。
 夕暮れ時といっても、まだ水平線の向こうで、太陽が沈み切ってしまおうかと迷っているような、そんな夕焼け雲も星空もある夕暮れ。
 コントラストが抑えられた映像の中で、観る者の感情に躙り寄るような演技を付けるアニメータ。
 映像が音声を、音声が映像を呑み込まんとする、演技の応酬。
 役者による声だけの演技と、アニメータによる絵だけの演技がぶつかり合った結果、そこには紛れもなく、遠野美凪という'少女'が泣いていました…

 これまでのハイクォリティな映像作品といえば、どちらかというと、その技術そのものを「凄いなぁ」といっていました。
 ところがこの『AIR』は、その技術がきちんと作品の中身に向けられていて、「凄いなぁ」という言葉はそのまま、『AIR』という作品自体を指しています。
 『AIR』は何と、骨太な作品だろうか。
 確かな技術によって裏打ちされ、観た者の心に楔を打ち込む作品は、まさにエンタテインメントの極み!
 しかも『AIR』はそれを、TVシリーズのアニメーションでやり遂げようとしている。

 歴史に残る作品が今、生まれようとしている…


 それでは、よしなに。(敬称略)

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投稿: 流浪人 | 2005/02/04 21:11

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