【感想】『AIR』第六話「ほし -star-」
突然ですが皆さんは、『DESIRE』(1994 C's ware)をご存じでしょうか?
昨年、(株)インターチャネルよりPS2版が発売されていますので、ご存じの方も多いことでしょう。
『DESIRE』の登場人物であるティーナとマルチナ・ステラドビッチの関係は、ラストシーンになってようやく明かされます。
ですが、この『DESIRE』を普通にプレイしていれば、そんなラストシーンを待たずとも、この二人の関係は自ずと見えてきます。
そんな分かり切った話が愉しいのか?
そう仰る方もいることでしょう。
現に自分も、この『DESIRE』をプレイするまでは、そう思っていましたから。
ですがこの分かり切っているラストシーンが、ストン!と自分の胸に落ちてくる。
いや、もっと厳密にいうと、この分かり切っていた二人の関係のことを、本人の口から直接聞きたかった。
ただ、それだけのことです。
たったそれだけのことなのですが、これがまた胸に来るんです。
分かり切っていることでも、ストーリーの持って行き方一つで、充分に人を感動させることができる。
『DESIRE』はそんなことを自分に教えてくれた、最初の作品でした。
ちなみに、マルチナ・ステラドビッチ役は、かの池田昌子さん。
そして奇しくもティーナ役は、観鈴役でお馴染みの、とも蔵こと川上とも子さんです。
さて、翻って今回の『AIR』です。
自分は今回の第六話を観て、この『DESIRE』のラストシーンを思い出しました。
エンドテロップに於いて、みちる(CV:田村ゆかり)だけ名字が記載されていない。
そして美凪(CV:柚木涼香)の亡くなった妹の名前は、みちるという…
これだけでももう充分に、この二つが線で繋がります。
だけど自分はその答えを、直接みちるの口から聞きたかった。
はっきりと、亡くなった妹の生まれかわりであることを、示して欲しかった。
もちろん、そんなにはっきりとした台詞にしなくても、これまでのみちるの一言半句からはもう、その答えが滲み出ています。
だけど、それでも聞きたい衝動に駆られる自分が今、ここにいる。
どんでん返しで引っ繰り返すことだけが、ストーリーじゃない。
愚直なまでに真っ直ぐ持って行くことだって、充分にストーリーになる。
つまりストーリーは、転がし方ではなく、魅せ方なんだということ。
嗚呼、なんとストーリーテーリングの奥深いことか。
自分は原作ソフトを未プレイなので、この展開のどこまでがTVシリーズだけのものかを知りません。
ですがいずれにしてもこの『AIR』が、高い技術力を持って、観る者を取り込もうとしているのがよく伝わってきます。
また今回は最初、作画が大人しくなった印象を受けました。
ですがBパートが始まる頃には、これが大きな誤解であることに気が付きました。
そしてエンドテロップが始まる頃にはもう、今回もハイクォリティであることに満足していました。
要は今回は、前回の発作シーンのように突出したシーンがないだけであって、決してレヴェルが低いわけではない。
むしろ今回は、相変わらずの高い技術力を持ってある一定の、それも非常に高いレヴェルで安定していました。
こんなにも安定しているのは、今自分が観ている中では他に、『MONSTER』(監督:小島正幸)と『舞-HiME』(監督:小原正和)ぐらいでしょうか?
さてここだけの話、これまで観鈴が見た夢を語るシーンは、正直にいうとよく解らなかったのです。
観鈴が見た夢は何かを示唆しているのだろうけど、それがもう一つイメージできていませんでした。
ですがそれが今回、劇場版を観て、皆さんの感想を読んで、思いっ切りネタバレを受けたことによって、観鈴の夢が何を示唆しているのかを、明確にイメージできるようになりました。
するとどうなったか?
自分は何だか、とっても切ない気分になりました。
観鈴はなんて悲しい夢を見ているのでしょう。
もしかするとこれ、原作ソフトをプレイされていた方は皆、第一話からこんな気分で観鈴の台詞を聞かれていたのでしょうか?
徐々にですが、自分の中で原作ソフトは、"した方がいい"から"しなければならない"に、シフトしてきています。
それでは、よしなに。(敬称略)
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コメント
内容がないのにTBありがとうございます。
劇場版とリンクしてるんですね。
ゲームもしていないので、何もコメントできなくて申し訳ないのですが、こちらに伺い、クオリティの高さやストーリーの良さが伝わってきました。ありがとうございます。
投稿: カメリア | 2005/02/11 16:37
カメリアさん、AVマウスによる録画予約を掛けられては?
AVマウスによって、RD-X3は動かせませんが、録画予約実行中はスタンバイ状態でも、映像が出力されていますので、今回のようにご本人が忘れていても、録画できると思います。
それでは、よしなに。
投稿: Akihiro Inda. | 2005/02/11 18:19
どうも。
BS-iのアニメ版Air、私もつい先日、1話から5話、そして6話を見る機会がありました。
すると、クオリティの高さや物語として十分楽しめる内容に驚きました。
そして他の方は、これをどう見るのだろうかと気になり、感想等を検索していてこのBlogに辿りつきました。
Akihiroさんの感想は十分客観的で、柔軟性を持ち、説得力があったので私も多くの部分で共感しました。
未だ原作の方は体験されていないとのことですが、私はTVシリーズの方が完結した後でも良いと思います。
TVはストーリーの進みが駆け足だという意見もありますが、私は丁度良い速さです。
原作は遅く感じてしまったもので。
又、原作の方も最後まで行かないとストーリーが見えない部分が多く、最初の方で1度投げ出してしまった覚えがあります(汗)。
色々な攻略・感想サイトを見て再挑戦したときは、結構楽しめました。。
ただ、原作よりTVの方が、物語を掴みやすいとは思います。3人のヒロインの物語が同時進行していきますから、伏線が効果的に働くようです。
上手い見せ方だなと感心しました。
これからどのような展開になるのか、ワクワクしますね。
次回以降もAkihiroさんの感想や考えを読みたいと思います。
それでは暫くよろしくお願いします。
P.S)
TV版を見て、劇場版Airも見たくなりました。
どうなんでしょうね。酷評が飛び交っているようで、少し戸惑います。
私はどんなことになっても受容するつもりでいるのですが。
DVDが出てからでも良いのかな。。
でも、TV版のように美しい風景が描かれているのなら、是非スクリーンで見たいです。
美しい風景と言えば、私も最初草薙の作品かと思いました。
Please!のおねてぃシリーズは綺麗な背景でしたから。
投稿: Sdo | 2005/02/12 02:14
これから先のクライマックスへの話に映画からAIRに入ったAkihiroさんがどう反応するのかが楽しみです(笑)
基本的に映画は全然違いますし、語るべき事を語ってないですから映画は。
>sadoさん
TV版と比べたら劇場版は全然大したことのない背景です。良くも悪くも東映まんが祭級ですね。
TV版が凄すぎるだけですけどね(^^;)
投稿: 碧輝せりか | 2005/02/12 09:47
こんにちは、いつもお世話になってます。
さて、「原作ソフトは、"した方がいい"から"しなければならない"」についてですが、もちのロンです!BS版を最後までご覧になってからで十分ですから、是非プレイされることをオススメいたします。12話という長さの関係から、或いは全シナリオを一つの流れとして統合する上で必要となった改変により、もっと色々なエピソードがあるんですよ。
アニメ(ムービーベース)とゲーム(テキストベース)では自ずと得手・不得手が出てきますので、アニメの方が凄いところもあるのですが、テキストでじっくり読んで頂きたい部分も枚挙にいとまがありません。是非是非。
投稿: てりぃ | 2005/02/12 10:59
TBどうもです。
DESIRE、懐かしいですね。自分はセガサターン版でプレイしました。実を言うと、内容はもう殆ど覚えてないのですが、結構、感動したような記憶があります。ただ、当時のゲームはいくら感動すると言ってもエロゲーという感じが強かったような気がします。サターン版はエロくはないですけど。
投稿: 名無 | 2005/02/12 16:05
皆さん、コメントサンクスです。
今回の感想にもタイプしていますが、TVシリーズ『AIR』の何が凄いって、これから先のことが分かっているのにも関わらず、それでも充分に面白いことです。
そしてこれは自分だけでのものではなく、原作ソフトをプレイしている方も、同様のようです。
でないとこんなにも、盛り上がっていないと思います。
このブログでさえ、アベレージ700ビジタ/1日足らずありますから。
それで劇場版に、TVシリーズの何かを求めた時点でもう、それを満たしてくれることはないと思います。
TVシリーズ『AIR』を是非、劇場の大スクリーンで観てみたいですね。
自分の反応はまぁ、これまでと同じです。
OKと思ったらOKとタイプしますし、NGと思ったらその通りにタイプします。
それで原作ソフトですが、それはもう色々な方から薦められています。(^^;
実は一昨年にも、TVシリーズ『君が望む永遠』の完成度が余りにも高くて、もうちょっとで原作ソフトに手を出すところでした。
でも何とか、思い留まりました。
理由は時間とお金がないから。(駄目じゃん…)
そしてまた今回も、うずうずとしています。
今回も思い留まれるかな?無理かな?
『DESIRE』は自分もSS版です。
今も昔もエロゲーだからとか、そういった色眼鏡はないものでして、『EVE burst error』の続きでプレイしていました。
この頃は、自分がゲームから離れるなんて、夢にも思っていませんでした。
絶対に定年退職しても、し続けているぞと思っていましたが…今ではもう、全然ですね。(^^;
それでは、よしなに。
P.S. 左のモビットをクリックすると…
投稿: Akihiro Inda. | 2005/02/12 16:43