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2002年5月

2002/05/02

【感想】『ミニパト』&『WXIII PATLABOR THE MOVIE 3』

 この映画は公開初日(2002/03/30)に鑑賞したのですが、色々とありまして、この感想文はゴールデンウィークに認めております。

 感想『ミニパト』第2話「あゝ栄光の98式AV!」

 しかし、ある程度覚悟していたとはいえ、ここまでパトレイバーを始めとするロボットアニメ・・・いや、ロボットやアニメに限らずパソコンなど、ありとあらゆる知識がないと100%の理解ができない作品だとは思いませんでした。
 また公式ページによりますと、自分が鑑賞した第2話の上映時間は12分だそうですが、これにはとてもそんな短い上映時間だとは思えないほどの内容が凝縮されています。
 これは偏に、シバシゲオ役の千葉繁さんによるところが大きいと思います。
 とにかく早口。
 矢継ぎ早に言葉を捲し立てるその語り口は、例えその話している内容が全く理解できなかったとしても、充分に楽しめたのではないのでしょうか?
 それから、もう一つの楽しみは、あのパタパタアニメーション(?)でしょう。
 これはなかなかテキストや静止画では伝えにくいというか、絶対に100%は伝えられないのですが、紙で出来た平面人形を、割り箸やピアノ線で動かしているような感じ。といえば伝わるでしょうか?
 ですがこの作品は、フルCGで制作されたようです。
 劇場公開前後に放送された特別番組によりますと、動きの検証のために、実際に紙人形を作成していたようですが、最終的には総てディジタライズされたようです。
 でないと、ああいった映像は表現できないと思われます。
 これは文字通り、これまでに観たことのない映像が観られること、間違いなしです。
 CGはハリウッド映画に代表されるような、実写との見分けが付かないリアルな方向へと、着実にその歩みを進めています。
 ですがその一方でこの『ミニパト』のように、CGでないと表現できない映像もまた、創り出されています。
 『ミニパト』第2話「あゝ栄光の98式AV!」は、一瞥すると、それなりの知識を持った者にしか笑えない、非常に閉鎖的なギャグ作品なのかも知れません。
 ですが、もっとよく咀嚼してみるとこの作品は、短い時間にどれだけのコンテンツを詰め込めるのか?ということと、これまでのフィルムでは表現できなかった映像を追求した、たいへん意欲的な作品であったと思います。

 ところでこの作品、初見で内容を100%理解できた人は、どのくらいいるのでしょうか?・・・

 感想『WXIII PATLABOR THE MOVIE 3』

 さていよいよ本編の感想なのですが、まず第一に、たいへん地味ながらも非常に観応えのある作品だと感じました。
 「昭和75年の東京に怪獣が出現する」と聞くと自分は、怪獣映画に代表されるような、リアルな視点で作品を観ることを憚られるような内容かと思っていたのですが、それはとんでもない誤解でした。
 WXIIIは、たいへんリアルかつ重厚な、大人の人間ドラマでした。
 JOQR「ポリケロののわぁんちゃってSAYYOU!」内で脚本のとり・みきさんは、「ロボットものではなく怪獣ものをやりたかった。でも蓋を開けてみると、ロボットものでも怪獣ものでもなくなっていた」といった旨を話されていました。
 この言葉の通り、WXIIIは割合でいえばロボットものでもなければ、怪獣ものでもありません。
 この作品は間違いなく、大人の女と男が紡ぎ出す人間ドラマです。
 しかもそれは、明るく華やかなラヴストーリーではなく、暗く悲しいラヴストーリーでした・・・
 ですが、だからといって、ロボットや怪獣といったギミックが、このラブストーリーと相反していることはなく、むしろ相乗効果をなしている。
 ここがこのWXIIIの凄いところだと思います。
 普通、作品内容がどんどんリアルになればなるほど、ロボットや怪獣といった空想の産物は、どんどんとその作品から乖離していくと思うのです。
 ところがWXIIIは、「東京」や「警察」といったリアルなものをよりリアルに描き上げることによって、逆に「ロボット」や「怪獣」といったアンリアルなものを、作品世界に定着させている。
 しかもこの作品の主人公は、ロボットでもなければ怪獣でもない、久住 武史(CAST:綿引勝彦)と秦 真一郎(CAST:平田 広明)という、一介の刑事たちなのです。
 ここまで徹底的にフィクションを描きにくい舞台を用意した上で、徹底的にフィクションを描ききったWXIIIは、たいへん希有な作品だと思います。

 例えばこれは、ロボットとか怪獣とかを抜きにして、敵役。
 ハリウッド映画の大概がそうだと思うのですが、主人公達が活躍するためには、必ずそれ相応の敵役がいます。
 そしてその敵役が、例えばエイリアンに代表されるように、とにかくエイリアンだから人間を襲ってくる。
 そしてその異形の存在理由などは、余り多く語られない。

 ところがどうでしょうか、このWXIIIに於ける怪獣(廃棄物13号)は。
 その怪獣の成り立ちは、東都生物医学研究所主任研究員である岬 冴子(CAST:田中敦子)の亡くなった娘の癌細胞から。
 「死んだ娘が(例えその姿が怪獣であったとしても)生きている」というモチベーションは、これまでのマッドサイエンティスト系には余りなかったものと思います。
 そして人を襲う理由は恐らく、あの怪獣に宿った新しい生命のため。
 このあたりのギミックはエイリアンにもあったものですが、その表現方法が、実に心憎かったです。
 この映画のラスト近く。
 スタジアムの真ん中で、陸上自衛隊の特別部隊に焼かれていく廃棄物13号と、それを見詰める岬の姿。
 それまで娘を思う母、岬の姿を描き続けてきたWXIII。
 岬の自室の壁一面に貼ってある、異常なまでに大きく引き延ばされた娘の写真が、たいへん印象的でした。
 しかし、スタジアムに入る岬に、秦は「あれは君の娘なんかじゃない、化け物だ」と告げる。
 そして岬の眼に飛び込んできたものは、やはり秦のいう通りの化け物なのだけれど、その化け物の乳房は大きく脹れていました・・・
 例えどんな姿になった娘でも、その娘のことを思い続ける母と、例えどんな姿になったとしても、女であり続ける娘。
 これは自分の考え過ぎなのかも知れないけれど、この映画に自分は「親子愛」を観たような気がします。

 さて、自分のページに自分が観た映画の感想を書き連ねて以来、観終えた後に「さぁもう一度最初から観よう」と思えた作品は、このWXIIIが初めてです。
 特別な能力を持った者が活躍する訳でもなければ、感動的な大団円が待っているわけでもない。
 むしろ後に残るのは、結局何も出来なかったという、物悲しい結末のみ。
 ですから、カッコイイレイバー戦や第2小隊の活躍・・・
 はたまた、劇場版前作、前々作の押井テイストを期待していた人たちには、余り良い作品には映らなかったことでしょう。
 だけどこのフィルムには間違いなく、不朽の名作としての味わい深さが鏤められています。
 じっくりと腰を据えて、蕩々と語られるストーリーを咀嚼できる方には、自信を持ってお薦めできるこの作品。
 映画館まで足を運ぶだけの価値は、充分に内包されています。


 以上

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