【感想】『メトロポリス』
梅雨真っ直中の6月を、皆さんどうお過ごしですか?
自分はすっかり黴っています。
今回は、そんな最中に観てきました、『メトロポリス』の感想をタイプしたいと思います。
「心のないロボットに、愛は生まれるか。」
これがこの映画のキャッチフレーズです。
このある意味で永遠とも思えるこの命題は、手塚治虫さんからすれば、まさにど真ん中直球ストレート勝負なのでしょう。
しかし、今を生きる自分からすると、この命題は今更感があまりに強過ぎます。
その上、監督はりんたろうさんに、脚本は大友克洋さん。
はっきり言いまして、この映画の話を聞いたときには、全くと言っていいほど食指が動きませんでした。
ですが、公開前に放送されていたTVCFを観るにつけ、ハイクォリティな映像が愉しめるなぁと、思い始めました。
さて、そんな思いで観てきた『メトロポリス』。
いや、凄かったです。
何が凄いって、CGが凄いとかアニメーションが凄いとか、そういったことを凌駕するぐらいの映像が、そこには繰り広げられていました。
『マトリックス』(監督:ラリー・ウォシャウスキー&アンディー・ウォシャウスキー)のときにも、まだまだこれまでに観たことのない映像が観られるものだなぁと感心していたのですが、今回はまたそれに輪を掛けて、これまでに観たことのない映像が観られました。
2Dアニメーションと3DCGの融合は、これまでにも行われていましたが、その手法でここまでのモブシーンを映像に創り上げたのは、この『メトロポリス』が初めてでしょう。
公式ウェブページの完成記念インタビュー2によりますと、レセプション会場のモブシーンは、300人をバラバラに動かしているそうで、トップシーンはたった3秒間で1,000枚(!)の動画が用いられたそうです。
しかもこの動いているキャラクタというのが、背景の3DCGとは不似合いと言っても過言ではないほどに手塚漫画チックにデフォルメされたキャラクタばかり。
このあたりは、ディジタル技術の進歩もさることながら、これだけの偉業を成し遂げたアニメータとレイアウト作画監督に、心から拍手を送りたいと思います。
といったように、『メトロポリス』という作品は、映像的見地からはたいへん観応えのある作品でした。
しかしです・・・
物語的見地から観た場合はどうでしょうか。
ロックという人をバンバン殺していくキャラクタを出してこないと、前に進まないストーリィ。
しかもその行動原理は、男性キャラなのにファザーコンプレックスという、もう一つ共感できないもので構成されています。
また劇中では、最後まで殺人に対する倫理観が語られなかったため、この人殺しという行為が『メトロポリス』に於いて、日常的な物か非日常的な物かさえ、提示できないでいた世界観。
記憶喪失ものの典型を貫く物語骨子。
崩壊する建築物の中、高いところから落ちかけるヒロインを救おうとするシチュエーション。
これらの要素のうち、どれか一つが欠けたとしても、この作品は『メトロポリス』ではなくなってしまうのでしょう。
しかしこれらの要素はどれも、今となっては「在り来たり」という言葉で片付けられれてしまう代物です。
ですがそれを敢えて取り上げ、これだけの映像作品にまで仕上げた制作者側は、この作品を通じて視聴者にいったい何を伝えたかったのでしょうか?
「心のないロボットに、愛は生まれるか。」
キャッチフレーズを素直に受け取ると、この命題がその答えにあたると思います。
ですが、いかに映像がトップクラスであったとしても、それによって表現されている物が、他人の手垢にまみれている物では、自分の心には響いてこないです。
結局のところこの作品は、視聴者の心に楔を残すことを一位とした作品ではなく、半世紀前の手塚漫画を、最新技術によって現代に復活させることを一位においた作品なのでしょう。
しかしです、自分の周りでは概ね好評なこの作品。
特に公式掲示板では大好評です。
多くの人から「涙した」との言葉を聞きました・・・
ですからこの作品は、自分の心には届かなかったものの、より多くの人の心に、きちんと楔を残している素晴らしい作品であると思います。
ではこの違いは、いったいどこにあるのか?・・・
反論覚悟でタイプすれば、それは恐らく、手塚漫画に傾倒しているかどうかの差ではないでしょうか?
よく「手塚治虫さんは偉大な人だ」という話を耳にします。
勿論彼がいたからこそ、今日の漫画やアニメーションが、ここまでの隆盛を極めているのでしょう。
しかしです、自分は彼をそこまで特別視していません。
個人の作品に触れることに限っていえば、彼もパッ!と出の新人漫画家も、自分から見れば同じ漫画家です。
人が感じた感動を否定する気はさらさらありません。
ですが、『メトロポリス』を観て感動した人に、是非とも言いたい!
その感動が「手塚治虫作品だから」に直結していないかどうかを確かめて欲しいことと、もう一つは過去の偉人の作品だけでなく、パッ!っと出の新人の作品にも目を向けて欲しいということを。
「温故知新」をいつも心に・・・
以上
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